
全国1,000万の果て丘ファンの皆さまこんにちは。神楽岡マイです。2025年11月7~9日に千夜一夜座様による舞台『果て遠き丘』が上演され、ワタシは2日目の昼公演を観てきましたので、感想なんかを書きたいと思っています。
三浦綾子作『果て遠き丘』は、 #綾活 メンバーならおなじみの作品ですね。三浦作品史上、好感度が最高クラスと最低クラスの登場人物を当時に楽しめ、かつ、ハチャメチャな女の子が出てくる作品です。ギャップ萌えにはたまらん。そんな『果て遠き丘』にワタシが出会ったのは2020年ごろで、それまで『塩狩峠』『氷点』『銃口』あたりを読んできたあとだったもんで、とにかく登場人物に衝撃を受けた印象があります。感動は一切なし(笑)。終盤で金井から香也子が特大の嫌がらせを受けるわけですが、そのあとの香也子の防衛機制のメチャクチャっぷり。そして「え?ここで終わるの?」という、三浦作品あるあるのラスト。「『氷点』『塩狩峠』のように、きっと綾子さんはこの作品にも何らかのメッセージを隠しているに違いない!」と思いまして、そのあと何度か読み返しているうち、不思議と香也子に思い入れが出てきまして、今では推し作品となっています。隠しメッセージには気づかないままだけど。

舞台の話に戻ります。会場は70席規模の劇場「池袋シアターグリーン」。ワタシの行った回はほぼ満席でした。千夜一夜座さんは過去にも三浦作品を上演されていて、そのなかには『道ありき』も入っているようです。これは、観た人全員感動したでしょうね、きっと。

休憩を挟んで約2時間の公演はあっという間で、推し作品のキャラクターが動き、話しているのを目の当たりにすると、なんとも表現しがたい喜びといいましょうか、演劇そのものへの感動がありました。すごいな演劇って。演者の方はこの作品に触れた時にどう思われたのか?とか、よくぞまぁ引き受けてくれたというか、ちょっと言葉にならなかったです。正直、『果て遠き丘』は、ドラマならともかく(一度、香也子役が秋吉久美子さんでドラマ化されています)、演劇の題材としてどうなんだろう?と感じていたのも事実。前説の方が「あらかじめ(配布されている)人物相関図をみておくといいですよ!」と話されていた通り。この作品は登場人物がまぁまぁ多くて、しかも関係性がややこしく、初見の方は観劇後に人間関係を理解できていたんだろうか?などと思っていました。そんな疑問に対し、演者の方はそれぞれとても個性的で、『果て遠き丘』の魅力を存分に引き出してくれていました。
あと、演劇自体、生涯で観るのが二度目のワタシが偉そうに言うのもなんなんですけど、脚本のすごさね。時間が決められていたせいか、一部のシーンや性格描写が省略されていた部分があったんですが、しっかりとした作品になるものなんですね。もしかしたら「展開早っ!」と感じた方もいるかもしれませんが、演劇ってこういうものなのかもしれません。なお、ワタシなんかはよく訓練されているため、省略された部分は自動的に脳内補完されながら観劇していました。
以降、主な登場人物に対する個人的な感想を順不同で書かせていただきます。演劇に対する造詣が浅いので(というか経験値ゼロ)、失礼な点がありましたらご勘弁を。
◆運転手,五十嵐教授,料理店店員(古屋直樹さん)
香也子を神居古潭から乗せた運転手役、「失礼ですがどちら出身ですか?」というようなキャラクターで、笑いが起きていました。五十嵐教授にしても、まるで漫画に出てくるような大学教授を演じられ、出演時間は短くとも確実に爪痕を残していたように思います。あと、結婚を報告してきた二人に「婚前交渉はどうなの?」とか聞いちゃいますかね?あ、これは原作者に言うことか。
◆橋宮容一(鈴木順也さん)
橋宮容一のような男性って三浦作品によく出てくるような印象があります。いたって普通だけど、ほどほどに欲があるような人。なんか憎めないなぁ、っていうようなキャラクターをその通りに演じられていました。ただし、セットに時間がかかりそうなあの髪型は全く普通ではなかったです。
◆橋宮扶代,鈴村貴子(朝見しのぶさん)
扶代は章子家出事件の前後でキャラが全く変わりますよね。これがすごくよく伝わってきました。なんかかわいそうなんだよね、扶代って。容一は、家で扶代が笑顔でいてもらうだけで幸せだとは思わないんですかね?さっき容一を「憎めない」って書いたけど、舞台上の扶代を思いだしていたら容一がだんだん憎らしくなってきました。手のひら返し。
◆橋宮章子(YU♪さん)
正直に申し上げて、第一印象が「章子ってこんなに可愛かったっけ?」でした。原作読んだ時点では、香也子がアレな感じで恵理子が真逆で、章子はその中間、ごく普通の女性というイメージだったんですよ。今回のキャストの中で、一番自分のなかのイメージと違っていました。もちろんいい意味で。章子も相当ひどい目にあっていまして、パウンドケーキ事件では、メチャクチャ怒ってましたね!なお、「橋宮香也子被害者の会」を結成して旭川地裁で記者会見する部分はカットされていました。おっと、これは原作に無いワタシの妄想。
◆小山田整(小乃勢也さん)
整さんの爽やかっぷりが、舞台上にそのまんま表現されていました。原作ではトップクラスの人気キャラなのに登場シーンが少なめで、整さん推しにはつらかったんじゃないでしょうか?整さん視点の「もうひとつの果て遠き丘」というお話を作って、舞台にしてもらえたらいいですよね。そういう脚本を書くのを得意としている人がいるんじゃないかな?(美瑛方面を見ながら)。
◆藤戸保子,シスター(木村早希さん)
保子は原作以上に色っぽさが出ていて、引き込まれそうになりました。ツネさんが心配するのも無理はないくらい、すごく魅力的な女性として演じられていました。保子と稚内に行ったんなら、ゑむゑむさんに観光案内してもらえればよかったのに。(ただいま、現実と演劇を混在してしまったことをお詫びいたします)。
◆藤戸恵理子(永岡由貴さん)
エレガントさ、上品さ、つつましさ。恵理子の特徴を原作以上に見事に演じられていて、「恵理子を嫌いになる人はこの世にいないでしょう?」と思うくらい魅力的な女性でした。「三浦文学箱入り娘選手権」があればぶっちぎりの一位。ラストのウエディングドレスのシーンは美しかったです。容一に「洋裁屋をやりたくないか?」と言われたときの表情が、100点満点で2,000点でした。
◆西島広之(わたなべひろしさん)
原作通りのいい人っぷりがビンビン伝わってきまして、「こんなにいい人が世の中にいるんんだろうか?」と逆に考えさせられました。普通「会うのは週に一回にしましょう」「待つことも楽しみ」なんてこと言えます?朝の通勤で乗るバスが、5分遅れるだけでもイライラするワタシには無理。あと、西島さんといえばギターですよね。舞台上で誰もが知っているフォークソングの名曲を歌われていまして、「これなら、小川の向こうで恵理子が気にするのも無理はない」と思いました。その歌われていた曲のタイトルを失念しています。誰かコメントで教えてください。少なくとも「神田川」とか「バンビーナ」ではなかった。前者なら恵理子が「ここ神田川じゃないんだけど」とツッコミそうだし、後者はもはやフォークソングですらない布袋寅泰の名曲。
◆金井政夫(根井雅人さん)
「三浦文学悪人ランキング」で上位常連の金井さん。イヤな奴っぷりを演技で見ると、イヤな奴度がマシマシになっていました。気持ちいいほどのイヤな奴でしたねぇ。ここまでイヤな奴に演じていただきまして、本当にありがとうございました。とはいえ、金井も最初は香也子のハニートラップにまんまとひっかかり、煮え湯を飲まされているんですよね。ラストの香也子への反撃(?)シーンは、ア・バオア・クー攻略戦でのガンダムとジオングのごとく、手に汗握りながら観ていました。
◆橋宮香也子(墨﨑亜佳音さん)
2時間という時間制限のあるお芝居のせいか、香也子の意地悪度,ハチャメチャっぷりが凝縮され、「香也子の魅力全開」「ずっと香也子のターン」「常在戦場」「香也子の香也子による香也子のための2時間」という感想でした(最上級の誉め言葉)。衣装が何着用意されていたんだろう?ってぐらい衣装替えが多かった印象で、舞台裏では大変だったのでは?なんてことも思いました。動く香也子、思っていた以上のアレっぷりな香也子を演じていただき、本当に感動&感動。演者の方が出口でお見送りしてくれた際、香也ちゃんを見つけるやいなや「$%&’”#$!!!」と取り乱したことを深くお詫びいたします。
最後に藤戸ツネを演じられた座長の田中千寿江さん。原作のツネは「ちょっと小うるさいおばあちゃん」というイメージだったのが、お芝居では「小うるささ」がなくなって、やさしいおばあちゃんになっていました。今回、『果て遠き丘』を舞台にしていただき、本当にありがとうございました。全国1,000万の果て丘ファンの末席から感謝申し上げます。次回はぜひ、一部の #綾活 メンバーが待望している『奈落の声』舞台化をお願いいたします!



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